チチブイワザクラ (サクラソウ科サクラソウ属)【秩父岩桜】
(Purimura reinii var. rhodotricha)
「コイワザクラ」の変種で、秩父の武甲山にのみ生育する固有種。
コイワザクラとほぼ同様ですが、花が大きめで葉柄や花茎に赤い毛が密生します。
花筒部分が細長めで、尖った萼片が開出ぎみになるようです。
この仲間の特徴で、長花柱と短花柱の2タイプがあり、花の中心の喉部から花柱が見えていたり、見えなかったり。
葉は丸く毛深く、縁の切れ込みは浅めです。
コイワザクラの石灰岩変異とみられ、武甲山の石灰岩の岩場や岩壁の割れ目などに生育します。
しかし、石灰岩の生育地エリアはセメント会社の所有地で、非公開・立入禁止の鉱区となっており、現状不明。
同様の状況にある「ミヤマスカシユリ」などと併せてセメント会社が育成保全を行っており、「武甲山資料館」にて開花期に鉢植えを公開しています。
2000年ごろ以前の記録では、一般人が現場で観察した記録もありますが、採石場の開発が進むにつれそのような例も無くなり、現在はすでに生育地は失われているという話も聞きます。
セメント会社が種の保存を行っているのは良いことではありますが、戦前からの国指定天然記念物とされているのですから、鉢植えを育てているというレベルではない気がします。
採掘鉱区から外れた石灰岩地を指定区域として保全、石灰岩地特殊植物群落をまとめて育成、小さくとも資料館付属の植物園として保全・公開するような取り組みが成されて然るべきと考えるのですが、如何なものでしょうか。
武甲山がその身を削って、この国の高度経済成長に貢献してきた莫大な実績から見たら、微々たる投資かと思うのですが。
今や、実質的に「野生絶滅」状態に近いようです。
環境省カテゴリ:絶滅危惧ⅠA類 (CR)
埼玉県:絶滅危惧ⅠA類 (CR)
国指定天然記念物
武甲山石灰岩地特殊植物群落