フガクスズムシソウ (ラン科クモキリソウ属)【富岳鈴虫草】
(Liparis fujisanensis)
原生林の中の苔むしたブナやカエデの古木の樹幹に生える着生性の小型ランです。
着生植物の常で、空中湿度の高い自然度の高い森でしか生きられない希少な植物です。
同属の地生蘭である「クモキリソウ」や「スズムシソウ」によく似ていますが、唇弁はクモキリソウのように反り返り「コクラン」などにも似ています。
スズムシソウとクモキリソウとの雑種と見なされていた時期もあったようですが、今では遺伝子解析により独立種と立証されています。
富士山麓で初めて発見されたので「富岳」の名を貰い、学名にも「富士山」が入っていますが、本州、四国、九州に分布します。
クモキリソウのように2枚の葉の間から花茎を伸ばし、数個の花序をつけます。
普通は透明感のある紅紫色~紫褐色の花ですが、色の濃淡など個体差が大きく、稀に白花(素心)の個体も見られます。
巨樹の上のほうに着生することが多いので、発見や観察・撮影が難しい花です。
環境省カテゴリ:絶滅危惧Ⅱ類(VU)
山梨県:絶滅危惧種ⅠA類(CR)
生育が確認されている28県ほぼ全てで絶滅危惧Ⅰ類指定。
樹幹への着生しかできないということで、近縁の地生のクモキリソウなどとは依存する菌類の種類が異なるらしいことが判ってきています。
すなわち、地面と樹幹では生育している菌類相が違うため、適合しないとうまく発芽や生育ができないようなのです。
わざわざ自らの生育条件を狭めてまで特殊化していった経緯はどういうことなのでしょう。
珍しい白花(素心タイプ)