ムシトリスミレ (タヌキモ科ムシトリスミレ属)【虫取菫】
(Pinguicula macroceras)
これは、「スミレ」の名を付けられていますが、スミレではなく、「タヌキモ科」の食虫植物です。
花の印象がスミレに似ているというだけで、よく見れば花のつくりも全く異なり、さらに葉は全く違うものとなっており、表面は粘液で覆われ、貼り付いた小虫を消化吸収します。
とはいえ、「モウセンゴケ」や「イシモチソウ」のように、葉が虫を巻き込むわけではなく、ロゼット状の広い葉の表面にくっつけるだけです。
従って飛翔力のある大きめの虫はとらえきれず、小さなコバエや羽虫のような細かな虫を捕えています。
分布は北海道から中部山岳までですが、四国などにかけても隔離分布しています。
亜高山から高山帯の岩場や湿地、草地に生育し、石灰岩質や蛇紋岩質のところにも生育します。
高く伸ばした1~3本の花茎に、唇形5裂で細長い距をもつ青紫の花をつけます。
花茎や萼、花の内部にも腺毛がたくさん生えています。
北海道:準絶滅危惧種(NT)
岩手県:絶滅危惧種Ⅱ類(VU)
秋田県:絶滅危惧種ⅠB類(EN)
福島県:絶滅危惧種Ⅱ類(VU)
埼玉県:絶滅危惧Ⅰ類(CE)
石川県:絶滅危惧Ⅱ類(VU)
福井県:県域絶滅危惧Ⅰ類
山梨県:絶滅危惧種ⅠA類(CR)
静岡県:絶滅危惧ⅠA類(CR)
徳島県:絶滅危惧Ⅰ類(CR)
高知県:絶滅危惧ⅠB類(EN)
この花は亜高山の岩場に見られ、高山植物に近い見方をされることもある山岳植物ですが、ここ青海黒姫山中腹では、石灰岩のカルスト地形による特殊な寒冷気候のため標高700mほどのところに生息しています。
9月中旬というのに、まだ残雪が残っている湿った石灰岩の岩場に群落で生えていました。
なおかつ、深い鍾乳洞の中から冷気が流れ出している場所でもあります。
流石に花はもう終わりでほとんど散っていましたが、通常の花期は6-8月ということですから、花期もここでは遅くずれ込むようです。
@糸魚川・黒姫山中腹