トラノオスズカケ (オオバコ科クガイソウ属)(旧ゴマノハグサ科)【虎尾鈴懸】
(Veronicastrum axillare)
「スズカケソウ」の仲間で、同じようにツル状の茎に花序をつけますが、スズカケソウと違い、花序が円錐形となり、花の色も紫ではなくピンク系の色です。
また、葉や茎が無毛で光沢をもちます。
個々の花は筒状で先端が4裂し、同属の「クガイソウ」などとと同様の構造になっています。
ツル状の茎は50cmから1m以上になり、先端が地面に着くとそこから根を出しストロン状に増えてゆきます。
自然分布では、四国と九州に自生し、どれも希少種の日本のスズカケソウの中では一番広い範囲で見られる種類です。
福岡県、愛媛県などで絶滅危惧1類
この目黒自然教育園で生育するものは、牧野富太郎博士が昭和7年に自生を発見したものです。
とはいっても、元々自然に自生するわけではなく、江戸時代に香川・高松藩の松平讃岐守の下屋敷であったこの場所に、藩命を受けた平賀源内が領地から移植したものだそうです。
明治時代になってここは軍の火薬庫の敷地となり、大正時代に宮内省の御料地となったため、人手が加わらず植生が保護されていたそうです。
その後、戦後の昭和24年(1949)に文部省所管の国立自然教育園とされたもの、その後生育が見られなくなり記録もはっきりしないので、完全に絶滅したとされていました。
ところが、平成19年(2007)になって、見慣れない植物があるということで何と58年ぶりに再発見されたのです。
どうやら、地中に種子が長らく休眠状態のまま存在し、付近の大きな樹木が枯れて倒れたことにより日当たりや環境が変わって復活してきたと考えられるそうです。