ツクシスミレ (スミレ科スミレ属)【筑紫菫】
(Viola diffusa)
このスミレは日本の他のどのスミレにも似ていない独特の種類です。
九州西部南部と沖縄の一部に分布し、しかも人里周辺に多く生育するということなので、古い時代の帰化植物と思えます。
海外での分布も台湾、中国、フィリピンなどということなので、人為的な帰化でないとしてもわりあい近い時代に海沿いに伝来したのかもしれません。
東京でも、何故か小石川植物園と多磨霊園などに有るということですが、これは植物園で植えてあるという意味ではなく自生しているという意味です。
昔に研究栽培していたものの逸出か、または植栽樹木の搬入についてきたのか、いずれにしても一種の国内帰化植物という感じでしょうか。
花はまるで園芸種のビオラのような丸い花で下唇弁が極端に小さくなっています。
黄緑・黄色から白・薄紫へと淡く地味めなグラデーションが何ともいえない美しさです。
ところが、実物を見ると花は驚くほど小さく、オオイヌノフグリやトキワハゼなどと混ざっていると遠目に区別がつきません。
「フモトスミレ」などと同等ぐらいの大きさでしょうか。
距は極端に短く、うす黄緑で意外とごっつい萼も特徴的です。
葉がまた独特で、どのスミレにも似ていないスプーン状で、しかもロゼット状に生えています。
鹿児島などでは、場所によっては街中の雑草としてやたらに生えているようです。
熊本県、長崎県で絶滅危惧Ⅰ類指定。