コアツモリソウ (ラン科アツモリソウ属)【小敦盛草】
(Cypripedium debile)
日本の「アツモリソウ属」の仲間の中で、最も小型のランです。
檜や杉、赤松などの、少し木漏れ日が入る程度の日陰の林下に生育し、北海道南西部、本州中部、四国九州の一部に産します。
とても小さな草で、「アオフタバラン」などフタバラン類によく似た対生した2枚の葉だけがあり、その間から細い花茎を出して花が一つつきます。
葉は2枚対生で水平に生え、縁が波打ち微毛があります。
フタバラン類よりは大きく、光沢があり3脈があるので見慣れると意外とわかりやすいようです。
ただし、小さな花は葉の下にぶら下がっているので、漫然と歩いて上から見ていると判りません。
花はたしかに「アツモリソウ」の形をしていますが、とても小さく直径1cm~1.5cm程度しかありません。
丸い唇弁を取り囲むように背萼片、側花弁があり、側萼片は2枚が1枚に合着して後ろに下がっています。
背萼片は、まるで唇弁の入口に蓋をするようにかぶさっていることが多いので、見慣れないと唇弁の向きがよく判りません。
花茎の上の方には1枚の苞葉が突き出しています。
唇弁は白色に濃赤色の筋が多数入り、入口の内側は折返しの2重構造になっています。
訪花昆虫が簡単に出にくいためと思われ、蕊柱の脇には虫の出口となる隙間が設けられています。
唇弁の形や色、匂いなどがキノコに擬態しているという説もあり、こんな林下の地面の小さな花に潜り込む昆虫はやはりキノコバエやショウジョウバエ類と思われます。
姿の綺麗さを別にすれば、受粉に関しては「クロヤツシロラン」などと同じ方向に進化してきたのかもしれません。
赤い条線が無く、側弁基部などに僅かに紅色が残るものは「シナノコアツモリソウ」という品種とされています。
また、稀に純白の白花品種もあり「シロバナコアツモリソウ」とされています。
環境省カテゴリ:準絶滅危惧 (NT)
山梨県:絶滅危惧種ⅠB類 (EN)
その他全国20都道府県で絶滅危惧指定