ムコジママンネングサ (ベンケイソウ科キリンソウ属)【聟島万年草】
(Sedum mukojimanensis)
小笠原列島の固有種で、聟島(むこじま)列島の媒(なこうど)島の断崖絶壁に生育するマンネングサです。
従来、小笠原列島に自生するベンケイソウ科固有は「ムニンタイトゴメ」だけと思われていました。
しかし、小笠原のレンジャーが「ムニンタイトゴメ」と思ってTwitterに投稿した媒島での写真に疑問をもった研究者が調査したところ、「ムニンタイトゴメ」よりも倍くらいの大きさで葉や鱗茎の形も花期も異なることが判りました。
そしてDNA解析の結果もあって2020年に新種であることが判明しました。
たしかに植物園でムニンタイトゴメと較べると、葉が大きく平たい形で密につき、花の形も異なるようです。
媒島は現在は無人島ですが、かつて住民が住んでいた時代に置き去られたヤギが野生化して植生が大幅に破壊されてしまったため、野ヤギを駆除し植生回復が行われています。
面積1.37 km2しかないたいへん小さな島ですが、他にもクワガタムシの固有亜種が確認されているそうです。
隔離された小さな海洋島では固有進化が進むという、ダーウィンがガラパゴスで発見したようなことがここでも起きているわけですね。
東京都報道発表資料より
2020年07月13日
東京都環境局, 京都大学, 国立科学博物館小笠原諸島の聟島列島から新種の植物を発見
聟島列島初の固有植物ムコジママンネングサ小笠原諸島の聟島(むこじま)列島から新種の植物が発見され、「ムコジママンネングサ」と名付けられました。
本種は、これまで同諸島の聟島・父島列島に分布する絶滅危惧種のムニンタイトゴメとされてきましたが、形態比較や遺伝子解析などの結果から、聟島列島産のものは新種であることがわかりました。
同諸島の父島・母島列島には、それぞれ独自に進化した植物(固有種)が知られていますが、聟島列島からはこれまで植物の固有種は確認されておらず、本種が初の報告となります。聟島列島の植物は過去に野生化したヤギの食害により壊滅的な被害
を受けましたが、本種は海岸の断崖絶壁に生育することなどから、ヤギの食害を免れて生き残ってきたと考えられます。
本種の存在は、聟島列島もまた他の島々と異なる独自の生物相を発達させてきたこと示す重要なものです。