クゲヌマラン (ラン科キンラン属)【鵠沼蘭】
(Cephalanthera longifolia)
「ギンラン」にたいへんよく似ていますが、花が閉じ気味で花の「距」が無いか、ごく僅かな膨らみとなっています。
普通のギンランよりも葉が細身でやや大型になるようなので、全体の姿としては「ササバギンラン」との中間的な印象もします。
イメージとしては普通のギンランよりもひょろ長いという感じです。
花の距が無いといってもあるべき場所の痕跡は感じられるもので、距は無いが緩い顎はある、といったところでしょうか。
元来クゲヌマランは藤沢市の鵠沼で見つかったもので、海岸近くのクロマツ林内に見られる植物とされてきました。
きわめて希少種で、その後鵠沼では絶滅したとされてきました。
ところが、近年になって全国で海岸沿いの松林ではないところ、しかも造成地や都市公園などで多く見られるようになったのです。
急激な広がり方と、造成地、開発地で増えている様子は、帰化種の雑草を思わせるものがあり、本来のクゲヌマランとは別の「何か」ではないかとの説もあるほどです。
環境省カテゴリ:絶滅危惧Ⅱ類(VU)
また、このクゲヌマランによく似たものとして「ヤビツギンラン」があります。
これは、全体はギンランそのものですが、花の下唇弁が側弁化していて距が無く、閉じ気味の花が上向きに咲くものです。
これは2000年代に入ってから報告されたものなので、従来ギンランとして見逃されてきたものも多いかもしれません。
唇弁が側弁化とは「ペロリア」といって、古来の花の原型である放射相称型に先祖還りする現象で、まあ一種の個体変異です。
このヤビツギンランの場合は、草姿はギンラン同様幅広の葉で背が低めで花は小さめで上を向き、距は痕跡もなく蕾のような状態です。