シライトソウ (APG:シュロソウ科シライトソウ属)(ユリ科)【白糸草】
(Chionographis japonica)
林下の日陰に幽玄とした感じで咲く真っ白い花穂。
「サラシナショウマ」に似た感じかなとも思ってもいましたが、現物を見ると全く違うはるかに繊細な花です。
秋田以西の山中に咲く花ですが、草原中には出ず人為攪乱地にも出にくいということで、あまり見る機会は無いようです。
この森林公園内には植栽保護地があり、1000株以上の個体が一斉に咲く様子は公園の名物となっています。
曇り日だったので薄暗い林下に真っ白い穂だけがゆらゆら浮かび上がる景色は、ぼーっと眺めていると何か彼岸の世界に引き込まれてゆくような不思議な感覚です。
葉は地面にロゼット状に生え、ちょっと「ショウジョウバカマ」などに似ています。
しかし面白いことに、一本だけ生える茎はロゼットの中心ではなく、脇の方から生えています。
細かい鋸歯のある根生葉の他に、茎には転々と細い苞葉がついています。
細い茎は地面から1本だけ伸びて深緑色ですが、花の部分だけ薄緑色です。
このブラシのようなたいへん特徴的な花は、「ヒトリシズカ」などにも似て花弁無しで雄しべがでているものと思いきや、立派な花弁だそうです。
個々の花は4本の長い花弁と2本のごくごく短い花弁とをもち、その間に3裂した花柱と6本の雄しべをつけて、これで1セットとなっています。
つまり、基本は普通に6弁花ということです。
花の付け根にみえる濃い緑の丸いのは子房のようです。
九州地方などいくつかの県で絶滅危惧種となっています。
仲間の花に、関東の一部にしかない「アズマシライトソウ」があります。