ミヤマスカシユリ (ユリ科ユリ属)【深山透百合】
(Lilium maculatum var. bukosanense)
海岸に咲く「スカシユリ」の山岳型変種で、1941年に秩父・武甲山で発見された希少種です。(学名の変種名にも武甲山の名が付いています)
石灰岩などの急峻な岩場の割れ目に生え、茎は下垂して先端の花は上向きに咲きます。
花は濃いオレンジ色で、へら型の花被片の根元が細くなっているため花びらの間に隙間があるのは「スカシユリ」と同様です。
葉は細く、茎は急斜面の「ヤマユリ」のように細長く垂れ下がります。
武甲山の石灰岩地帯の固有種として発見されましたが、その後茨城県奥久慈の袋田の滝周辺の急峻な山地にも自生していることが判り、岩手県でも自生するようです。
現在では、自生状態が一般的に見られるのは茨城県の袋田の滝周辺の垂直の岩壁だけのようです。
本家の武甲山では、石灰岩の採掘のため山体がごっそりと削られ、僅かな自生地は一部保護されて辛うじて残ってはいますが採掘鉱区の中なので一般に見ることはできません。
現在ではセメント会社が鉱区内で保護育成している個体を武甲山資料館で年に一度鉢植えを一般公開しています。
埼玉県では増殖をはかるため、2014年に自生地の環境に似た秩父の岩壁に何株かを試験的に植え付けました。
現在もその株が生育していて、訪れたところ1株だけ咲いているのに出会えました。
また、蕾の株や散りかけの花と蕾がついたものがありました。
個々の株は個体管理されているようですが、当初の株数よりも減ってしまっているようです。
小さな個体管理札が立てられていましたが、札の場所に株自体が見当たらないものがいくつもあるようです。
大雨などで落ちてしまったのか盗掘されたのか…
【Youtube 山川草木図譜チャンネル】