ナガミヒナゲシ (ケシ科ケシ属)【長実雛芥子】
(学名 Papaver dubium)
地中海原産の帰化植物で、日本には1960年代から入ってきたそうです。
道路づたいに繁殖を広げ、市街地や住宅地を中心に日本全国に広がっています。
多摩地方でも、10年ほど前には、爆発的に到る所に繁殖を広げていました。
あらゆる空き地や道路わき、植え込みの中、歩道の敷石の継ぎ目やアスファルトのひび割れからさえ生えてきて、このままいくと日本中が、あのやや色褪せたオレンジに席巻されてしまうかと思っていました。
庭に侵入されないよう、隣接する公園で必死にむしり回ったりして。
ところが、その後数年して気がついてみれば、近所ではめっきり見なくなりました。
駅に向かう道端でも数カ所だけ生えているところで、かつては、その辺りを埋め尽くすほどでした。
帰化植物というのは、一時は敵なしで大繁殖しても、何シーズンか経つと、周りの環境の既存植物や昆虫や菌やウイルスや何やかやがこれを標的とすべく適応して、淘汰圧をかけ、「バブル崩壊」となるのでしょうか。
生態系のもつバランス維持機能は人智を超えています。
この花もあと数十シーズンを超えて、分に応じた一定のニッチを安定して確保できるようになったとき、地域の生態圏に本当の意味で帰化するのかもしれません。
ナガミヒナゲシの見事な実。
種子の大きさは、約0.7mmx0.5mmほどで、この実一つあたり平均1600個づつ入っています。
この細かさを武器として猛烈な勢いで拡散していったのでしょう。
拡散の大きな要因の一つとして、自動車の往来が激しい幹線道路沿いにどんどん進出してゆくことができたことがあるのではないでしょうか。