キイジョウロウホトトギス (ユリ科ホトトギス属)【紀伊上臈杜鵑草】
(Tricyrtis macranthopsis)
庭に咲いたキイジョウロウホトトギスの花弁の欠けた花を摘んだので分解観察してみました。(2019/10/16)
キイジョウロウホトトギスの花はユリ科らしく6枚のほぼ同じ形の花被片が合わさってできています。
外花被片には付け根に丸いコブ状の「距」があり、先端は黄緑の棘状になっています。
内外とも花被片の外側は無地の山吹色で、内側には赤紫のヒョウ柄のような模様があります。
キイジョウロウホトトギスでは、この斑模様が花被片の少し内側に引っ込んだ範囲についています。
ジョウロウホトトギス(トサジョウロウホトトギス)では、これが縁いっぱいまで散らばっています。
柱頭(雌しべ)と6本の雄しべは一体に合着して生え、柱頭は他のホトトギス同様先端が3裂し、さらにその先が2裂します。
柱頭先端周辺には、小さな水滴のような透明の腺毛状突起が沢山ついています。
これは他のホトトギスにも皆ありますが、何の役割をもっているのか判りません。
雄蕊の葯は白っぽく、これが「スルガジョウロウホトトギス」「サガミジョウロウホトトギス」では褐色になるようです。
外花被片の付け根にある「距」を内側から見るとそのまま丸いくぼみになっていて、蜜らしき透明な液体が溜まっています。
試しに舐めてみると、しっかり甘みがあります。
虫がこれを目当てに入ってきて花粉を運ぶのでしょう。
ちなみにポリネーター(花粉媒介者)は、「トラマルハナバチ」だそうで、この種はハナバチ類の中でも一番口吻の長い種類です。
細長い釣鐘型のこの花の一番奥の距の中を舐められるのはこのハチだけなのでしょう。
柱頭の下には三角に角張った薄緑の子房があります。
花が終わったあと、この部分が三角柱型の果実となります。