ツユクサ (ツユクサ科ツユクサ属)【露草】
(Commelina communis)
全国の道端や空き地、畑などで普通に見られる雑草ですが、ユニークで可愛いので万人に親しまれる花ですね。
鮮やかな青紫の花色と独特の形、早朝に咲いて午後にはしぼむ儚さなどで、どこにでもあるありふれた普通種ながらファンの多い花です。
2弁と見える花弁は実は3弁で、下の1弁が半透明の白色で目立たないので、2弁と思われていることが多いようです。
鮮やかな青紫色の花のすぐ下には、一番目立つ補色である黄色の「π」の字型の塊が3つあります。
ツユクサの蕊の構造はユニークで、雄蕊は全部で6本あるのですが、上段で黄色く目立つ「π」の字型のもの3個は「仮雄しべ」で実際の受粉に使う花粉を作らず、花粉を求めてくる蜂などに対する看板の役を果たしています。
その少し下の中段には、花粉を出す黄色い雄蕊が1本だけあります。
そして実際に機能する花粉を出すのは下の2本の雄蕊で、こちらの葯は黒っぽく目立たないものなっています。
花粉目当てで花にやってきた蜂などの虫は、上段の目立つ葯をめがけてやってきたものの、花粉が無いので探しまわり、中段の葯の花粉をあさります。
その間に下段の目立たない葯に沢山用意された花粉が虫の体に着きます。
そして他の花を回って同様に動く虫によって、中段と下段の間に配置した雄蕊に受粉できるようになっているのです。
この方法によって、目立つ仮雄しべにやってきた虫に一部の花粉を食べさせることで、多くの花粉を無駄なく運ばせるように設計されています。
さらに、ツユクサの花は昼頃には萎んでゆきますが、そのときに花弁の一緒に雄蕊と雌しべも丸まりながらしぼみ、自家受粉をするようになっています。
万一午前中に虫が有効な他家受粉を行ってくれなかった場合でも、花を無駄にしない仕組みになっているのです。
日本のツユクサ属は5種あるそうですが、普通にあるのはこの「ツユクサ」と、関東以西、関西中心の「マルバツユクサ」の2種です。
外来の園芸種「ムラサクツユクサ」も親しまれていますが、同じく園芸外来種の「トキワツユクサ(ノハカタカラクサ)」は各地で帰化してたいへんな勢いで増えています。