キスミレ (スミレ科スミレ属)【黄菫】
(Viola orientalis) 別名:イチゲキスミレ
日本の黄色いスミレは、ほとんどが北方系・高地系のものですが、この「キスミレ」は唯一暖地性の種類で、東海地方以西の太平洋側に分布します。
生育地は阿蘇山周辺が有名ですが、東海から九州にかけて各地に小規模に点在し、東限が静岡県の富士山麓となります。
「キバナノコマノツメ」や「オオバキスミレ」など寒地系や山岳系の他種に比べて草姿がたいへん小さく、花の形が丸っこく小さく独特です。
やや横長な感じの花は側弁に短い毛があり、距は無いかと思うほど短く、花弁の裏や蕾は紫褐色を帯びます。
草姿もスミレとしては独特で、一本立ちした茎から葉が出ています。
葉は花の咲き始めには展開し始めた段階で小さく、巻いたものも多くあまり目立ちません。
粗い鋸歯があり、葉裏は紫褐色を帯びています。
ススキや笹が生える山地草原で他の草が生える前に花を咲かせ、草の生い茂る夏には消滅して地下休眠してしまうという、「スプリングエフェメラル」的な生態をもつそうです。
阿蘇でも富士山麓でも、人為的に野焼きが行なわれる草原に生育し、野焼きがなくなってしまうと激減するといわれています。
生育地の各地で絶滅危惧種指定されています。