レブンアツモリソウ (ラン科アツモリソウ属)【礼文敦盛草】
(Cypripedium macranthos var. flavum)
北海道の礼文島固有種にて、世界で礼文島だけに生育する野生ランです。
「ホテイアツモリソウ」の変種で、クリーム色がかった白色無地の花を咲かせ「花の浮島」礼文島の観光の最大の目玉ともなっています。
ホテイアツモリ同様、小さなものが多い日本の野生ランの中では巨大といってもいいような立派な花を咲かせます。
唇弁は丸く大きな袋状になっていて、受粉にかかわるハナバチ類を迷い込ませて花粉を運ばせるトラップシステムとなっているようです。
この花は蜜を出さないので、普通には花粉媒介昆虫がやってこないのではないかと思われます。
しかし、周辺に「ネムロシオガマ」や「ノビネチドリ」「ハクサンチドリ」などの密や花粉を出す花が群生していて、その中に大きく目立つ花を咲かせることで訪花昆虫を迷い込ませているようなのです。
特に「ネムロシオガマ」は、花色や花序の大きさが似ているので、訪花昆虫の誘引に重要な役割があるといわれています。
ラン科なので、地中の共生菌が発芽や生育に必須で、発芽してから花を咲かせるまで5-7年ほどもかかるそうです。
明るい草原を好む植物で、高茎植物や樹林が茂ると生育地が奪われるのに加え、世界的に珍奇な花ということで盗掘の被害が著しく、大幅に衰退してしまった植物です。
現在では群生地を保護監視していることと、人工育種技術の確立で園芸盗掘を無くす努力が続けられています。
群生地は北海道の天然記念物に指定され、種自体が国内希少野生動植物種に指定されていて、許可なくして採取・譲渡等を行った場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。
環境省カテゴリ:絶滅危惧ⅠB類 (EN)
北海道:絶滅危惧ⅠA類 (CR)
「レブンアツモリソウ群生地」は管理された生育地なので、時期には必ずみることができますが、その他の場所でも稀に野生の個体をみることができます。
トレッキングルート上から遠くに目撃できた個体です。