クスノキ (クスノキ科ニッケイ属)【樟、楠】
(Cinnamomum camphora)
東海・東南海地方、四国、九州に分布する暖地系の照葉樹で、史前帰化植物とされています。
そのため、九州以外では山奥に生育することは少なく、野生の分布は太平洋側の人里に多いようです。
枝を張った巨樹になることが多く、各地の神社仏閣や公園などで古くから植えられ、名木とされるものも多いです。
枝ぶりが曲がっているので材木としては使いづらいようですが、樟脳成分を含むので虫喰いや腐食に強く、船の材料として重用されていました。
樟脳の原料として使われ、その成分により虫に食われる害は少ないものの、「アオスジアゲハ」の食樹でもあります。
独特の波打った形の厚手の葉には葉脈の付け根に「ダニ室」と呼ばれる微小な空間が2つづつあって、ここにダニが住んでいます。
面白いことに、ひとつの大きめの部屋にはダニ捕食性の「ケボソナガヒシダニ」というのが住んでいて、クスノキの葉を害するダニを退治する役割を負っているそうです。
さらに面白いことに、もうひとつの小さな部屋にはクスノキにとってほぼ無害の小型の植物食性のダニが繁殖していて、捕食性の「ケボソナガヒシダニ」の餌になっているということです。
これらがクスノキの樹冠の生態系の一部を維持しているわけで、神の仕業としかいいようがない感じがします。