スズカケソウ (APG:オオバコ科クガイソウ属)(ゴマノハグサ科)【鈴懸草】
(Veronicastrum villosulum)
園芸植物として江戸時代から知られ、今もネット通販でも簡単に買える植物でもありながら原産地不明の謎の植物。
植栽されたものが開花した情報を得て見てきましたが、他にあまり無いような変わった花でした。
全体は分岐せずに一本で伸びる、長いツル状の茎に互生の葉がずらずらと連なってついています。
ツル状といっても、蔓性ではなく巻き付くわけではありません。
長さは1m以上にも伸び、野生ではこの茎の先端の接地場所から根が出て増えるようです。
イメージとしては、急な崖から吊り下がって生えているのでしょうか。
丸い集合花序は葉腋の茎からいきなり咲き、個々の花は先が4弁に分かれた綺麗な濃紫色の筒状花で、雄しべが2本、雌しべが1本長く突き出します。
「クガイソウ」と同属と言われてもおかしな感じでしたが、この花の構造が「クガイソウ」と同じとなっているようです。
現在、自生地として知られるのは徳島県の一か所のみで、もう一か所あった岐阜県の竹林は園芸逸出であった可能性が高く、しかも現在は無くなっているらしいです。
そもそも、スズカケソウの仲間(クガイソウ属スズカケソウ節)は、日本に「スズカケソウ」、「トラノオスズカケ」、「キノクニスズカケ」、「リュウキュウスズカケ」の4種が知られていました。
ところが、何と2009年に千葉県の外房山中で新種「イスミスズカケ」が発見されました。
他には中国で数種知られているのみです。
中国では、福建省、安徽省、浙江省などの標高400-900mの丘陵地の森林や周辺の草原に生えるようです。
「スズカケソウ」と「イスミスズカケ」は、別種ながら実際は変種か品種かといった感じで見た目そっくりですが、他の3種は花が全然違います。
「トラノオスズカケ」は、九州と四国南部に分布し、「リュウキュウスズカケ」は奄美大島に生育します。
この2種は、絶滅危惧種とはいえ、分布域内では数か所以上、とくに「トラノオスズカケ」は場所によっては普通に生えているのですが、他の3種はいずれもピンポイントでしか存在していない、謎の隔離分布となっています。
「ミセバヤ」と同じで、江戸時代から園芸種として知られているのに、どこから来たのかよく判らない謎の花といえるかもしれません。
環境省カテゴリ:絶滅危惧ⅠA類(CR)