ヤマジノギク (キク科シオン属)【山路野菊】
(Aster hispidus var. hispidus) 別名:アレノノギク
関西系の分布域をもつヤマジノギクは、いかにも野菊らしい見栄えのする大きめの花なので、園芸用に品種改良が加えられ、大分県産の綺麗な紫の花が切り花として出荷されているそうです。
ここの写真は大分県農林研究所で品種改良を重ねた園芸品種を、都立薬用植物園が譲り受け植栽展示しているものです。
実際の天然自生のものはここまで濃厚な色合いではないながらも、綺麗なうす紫で「ノコンギク」や「ヨメナ」にも似ています。
ヤマジノギクは、ヤマジ(山路)の名がつけられていますが、山岳地というよりも海岸近くも含めた低地から、ススキの生えるような乾いた草原に生えるようです。
東海地方以西の分布域となっており、関東には自生しません。
自生地は草原の他、ガレ場っぽい崩壊地など別名「荒野野菊」の名の通り、荒地の貧栄養のところに生えるようです。
花の総苞片が細長く、葉は細長いヘラ型で、細長い葉のロゼットで1年過ぎてから花を咲かせる2年草です。
全体の草姿や生活史、生える場所など、「カワラノギク」によく似ており、分類学的にも同じシオン属イソノギク節とされています。
ここからは勝手な妄想ですが、その昔、関東地方や東北南部まで分布していたヤマジノギクが、気候変動や他種との競合など何らかの理由で西日本方面に分布を撤退させていったとします。
その中で、河原の荒地に適応した一部のものが他の植物との競合に残ってカワラノギクになったのではないか、という感じがします。
まるで氷河の衰退に取り残された高山植物のように。
中部から近畿にかけての各県で絶滅危惧種となっています。