エキサイゼリ (セリ科エキサイゼリ属)【益斎芹】
(Apodicarpum ikenoi)
「芹」とはいっても、属レベルで日本固有の植物で、主に関東平野と濃尾平野の氾濫原の湿地にのみ分布する希少種です。
セリ科の仲間には「シシウド」や「ハナウド」など大型の植物も多く、小さくても「セントウソウ」や「イワセントウソウ」ぐらいのイメージでした。
エキサイゼリはかなり小さいとは思っていましたが、現物を見ると驚くほど小さな花で、草丈も5-10cmくらいしかありません。
葉は1~4対の単羽状複葉で尖った鋸歯があります。
花序や個々の花はまさにセリ科の花ですが、5弁の白い花は径2mm以下ぐらいの小ささです。
花の終わった花序はそのまま果実となっていました。
湿地の泥の上にへばりつくように生えていますが、回りはヨシ原で、背の高いヨシの根方に埋まってしまっています。
そのためでしょうか、他のセリ科植物より早めの花期ですぐに果実を作り、初夏過ぎには姿を消してしまうという、一種の「スプリングエフェメラル」というべき生活史をもっています。
ちなみに「エキサイ」という妙な和名は発見者である江戸末期の富山藩主、前田益斎の名によるものです。
他の草に競り負ける小ささなので、河川の氾濫や野焼きなどの攪乱条件に依存しているようで、そのような環境面から生育地も少なく各地で絶滅危惧となっています。
環境省カテゴリ:準絶滅危惧(NT)
宮城県:絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)
茨城県:絶滅危惧ⅠB類
栃木県:絶滅危惧Ⅱ類(Bランク)
群馬県:絶滅危惧ⅠA類(CR)
埼玉県:絶滅危惧Ⅰ類(CE)
千葉県:絶滅危惧Ⅰ類
東京都:絶滅(EX)
神奈川県:絶滅(EX)
愛知県:絶滅危惧ⅠA類(CR)