ヒトツバイチヤクソウ

ヒトツバイチヤクソウ (ツツジ科イチヤクソウ属)(イチヤクソウ科)【一葉一薬草】 
Pyrola japonica var. subaphylla

ヒトツバイチヤクソウ

2021/07/04 山梨県忍野村

一見「ベニバナイチヤクソウ」ですが、葉が無い、または極端に小さな葉が1-2枚しか無い種類です。

また、花付きも少なく色も薄く、日当たりのよい場所ではなく、落葉樹とアカマツなどの混交林の薄暗い林床に咲いていました。

花期もやや遅く、ベニバナイチヤクソウとしては標高の低い場所(約990m)でした。

イチヤクソウ類は部分的菌従属栄養植物で、どれも自分の葉での光合成と菌根菌からの栄養両方に依存していますが、これはさらに完全菌従属栄養植物に一歩踏み出した変種のようです。

この方向でさらに進化して行けば、やがては「ギンリョウソウ」や「ムヨウラン」のように一切葉や葉緑素を持たないライフスタイルを得るようになるのかもしれません。


イチヤクソウの変種として扱われますが、ベニバナイチヤクソウの変種とされる「ムヨウイチヤクソウ Pyrola incarnata var. subaphylla」とどう違うのかいまいち不明。

両者は同じもの、という言説もみられますがYlistでは明らかに別種であり、同一物を指すという明確なエビデンスも見当たりません。

手元の「日本の野生植物」(初版第12刷)では、ヒトツバイチヤクソウだけ記載がありますが「イチヤクソウの葉が小さく1-2枚のもの」としかありませんでした。

「改訂新版 日本の野生植物」では、やはりヒトツバイチヤクソウだけ記載があり、こちらには

ときに葉が退化してなく、花茎や花が赤みをおびる個体があり、これは半腐生的な性質があるとも考えられヒトツバイチヤクソウといわれる。

となっています。
つまりここでは赤色についての言及があり、ベニバナイチヤクソウの変種については何ら記載がないので、この図鑑だけに従えばこの花は「ヒトツバイチヤクソウ」ということになります。

確かに、生育する標高が低めのことや、地下茎で群生しないことなど、ベニバナイチヤクソウよりもイチヤクソウの性質に近い感じはします。

しかしまた、ヒトツバイチヤクソウとしてWEBなどには普通のイチヤクソウと変わらぬ白花のものも見られます。
これは赤みを帯びるヒトツバイチヤクソウの「白花」というべきなのか?

どうも情報が錯綜混乱していまひとつ決定的な判断が出来かねます。

さらに、近年菌根菌に対する依存度が、母種とされるイチヤクソウまたはベニバナイチヤクソウより格段に高いことが(当たり前ですが)分子レベルで証明され、変種レベルではなく別種とすべきという説が出てきているようです。

ヒトツバイチヤクソウ

2022/07/07 山梨県忍野村

ヒトツバイチヤクソウ

2022/07/07 山梨県忍野村

ヒトツバイチヤクソウ

2022/07/07 山梨県忍野村

ヒトツバイチヤクソウ

薄暗い林下に点々と生え、群生にはならないようです 2022/07/07 山梨県忍野村

ヒトツバイチヤクソウ

2021/07/04 山梨県忍野村

ヒトツバイチヤクソウ

2022/07/07 山梨県忍野村

ごく小さな葉が1-2枚だけついています。

ヒトツバイチヤクソウ

ごく小さな葉が1-2枚  2022/07/07 山梨県忍野村

ヒトツバイチヤクソウ

ごく小さな葉が1-2枚  2022/07/07 山梨県忍野村



【Youtube 山川草木図譜チャンネル】

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