サイカチ (マメ科サイカチ属)(皀莢)
(Gleditsia japonica)
本州中部地方以西の沢沿いや川沿いに自生する樹木ですが、わりあい稀で、人里の川や水田の土手などに植えられているものが多いようです。
幹に鋭い棘があり、けっこうな大木になることもありますが、マメ科らしく丸っこい葉が羽状複葉です。
初夏に咲く花は黄緑色の目立たないものですが、秋に生る果実は20-30cmほどもある巨大な豆で、ねじ曲がった鞘をたくさんぶら下げて異様な感じです。
中身の種子は1cmほどですが種皮がとても硬くなり、地面に落ちてもそのままでは発芽しないそうです。
川の近くに生えていることが多く、熟した種子が流れ下ることが多いので、この木は水流で種子を散布すると以前は考えられていたようです。
ところが単に水中にあってもその硬い種皮が吸水を妨げて発芽しないため、実際にはそれで繁殖することは殆どできないようなのです。
この種子に「サイカチマメゾウムシ」という甲虫の幼虫が寄生するのですが、この幼虫が種皮を食い破った時点でたまたま雨が降ったり水中に落ちたりすると種子が吸水して発芽するそうです。
つまり、この虫はサイカチの種子を食べる害虫であると同時に、繁殖を手伝っているということになります。
その他、種子を何らかの鳥や動物が食べて分布を拡大すると思われるのに、その鳥や動物は確認されていないようです。
サイカチの実はサポニン成分を含んでいるので食用できず、その代わりその界面活性作用により石鹸洗剤の代わりになります。
それで昔から洗濯や洗い物に使うため、人の手によって水辺に植えられたとも言われています。
つまり人里においては人間が播種を行っている面もあるわけです。
さらに、アフリカではこのサイカチによく似たマメ科の植物の豆をゾウが食べ、排泄された種子がよく発芽する事実が判っています。
そのことから、日本でも数万年前に生息していたナウマンゾウが通常に食して播種動物となっていたという仮説があります。
ナウマンゾウが絶滅してしまったので、自然界でサイカチが稀にしか見られないのだというわけで、真偽は全く判りませんが面白い説だと思います。
群馬県、石川県、福井県、愛知県、和歌山県、島根県などで絶滅危惧指定