東村山・キンランの咲く雑木林
一昔前まで武蔵野の雑木林は薪炭や腐葉土などで利用され、利用することで代々維持管理されてきましたが、近年の都市化の中で次第に手入れされなくなり多くは住宅地へと代わってきました。
雑木林の代表樹種である「クヌギ」や「コナラ」などは、当地でも弥生時代から食料や工作材として利用されてきました。
一方、キンラン、ギンランなどラン科植物の起源は、白亜紀後期の7,600万年前から8,400万年前といわれています。
これらの地生ランたちは、雑木林の樹木と共生して地中に生育する菌根菌(キノコ)のネットワークとともに、共存共栄する生態系を組むように進化して生きてきました。
そして、そこに生活者としてやってきた人間たちもまた、雑木林の適正利用により共生関係に参加してきました。
つまり雑木林の維持には人が適度な芝刈りや笹狩り、樹木の更新や落ち葉かきなどの手を入れていくことが必要です。
東京都立多摩北部医療センターは、「たまほく」の愛称で親しまれている地域医療の中核病院です。
明治時代の養育院から始まったこの病院の前身は東京都多摩老人医療センターですが、そのころから老人ホーム職員や入居者、施設により武蔵野の面影を留める雑木林が維持管理されてきました。
平成17年の多摩北部医療センター開設に伴い、道路の開削などが行われ、同時にこの雑木林に残された貴重な野生植物を保全する取り組みが進みました。
現在では、地域住民を中心とするボランティアと東京都による草刈りや枯れ木の伐採などにより維持管理されています。
クヌギやコナラを中心とした雑木林の中で共生する多くの野生植物が生育し、とりわけキンラン、ギンランなどの絶滅危惧種の野生ランは8000株余りも咲き、日本一クラスと思われます。
その他にも早春から晩秋まで様々な野の花が咲き、近隣住民の散歩や森林浴など憩いの場でもあります。
東村山市の中でも、八国山や狭山公園など狭山丘陵に連なる緑地にも劣らない貴重な緑地が住宅街の中に残る場所は、今や中央公園や全生園などとこの場所しかありません。
これからも次世代に永く残してゆくべき緑なのです。
– 東村山 キンランの咲く雑木林を守る会 –
キンランの咲く雑木林にて – 東村山市 2024/04 –
キンランの咲く雑木林にて – 東村山市 2023/04/17 –