フィールド ギア (徳間書店)
フィールド ギア - 徳間書店 -
創刊号:1993年5月号。
徳間書店の「RVマガジン」から独立して新創刊した、キャンプとアウトドアのグッズ・マガジン。
グッズ・マガジンと言いきっているだけあって、お座なりなカタログページではなく、編集部自前の徹底したフィールドテストやインプレッションにこだわった記事が新鮮でとても濃い情報として価値がある。
取材には相当な手間がかかったことだろう。
オートキャンプ全盛期には、異常に濃くて細かいオートキャンプグッズ情報が満載で、読むのがイヤになるくらいの情報量だった。
ところが、いつの間にかメインがパソコンやビデオやカメラなどの「非フィールド」のグッズに移ってしまい、 何の雑誌だか、よく判らない状態になってしまった。
ポカラ (ポカラ出版)
ポカラ -(ポカラ出版)山と渓谷社-
創刊号:1996年秋・冬号。
冒険と旅をテーマに、それに関わる「人」に主な焦点をあてて構成される「人間ドラマ誌」。
昔あった、「現代の冒険」の復活ともいえる、ビジュアル系、カタログ的アウトドア誌の対極にある雑誌だ。
創刊号の特集は、関野吉晴氏のグレートジャーニー、浅井慎平氏+池内紀氏+椎名誠氏の座談会、 ヒマラヤ越えのアネハヅルの話、中国の野人、地平線会議の歴史など、幅広い探検家・冒険家ご用達のような内容構成で、とても地味だが内容の濃い雑誌である。
販売元は初めは「山と渓谷社」だが、途中から「星雲社」に替わっている。
こういう雑誌が地道に永く続いて欲しいものであったが2001年ごろ休刊。
探検倶楽部 (青人社)
探検倶楽部 – 青人社 –
創刊号:1995年7月号。
青人社の「おとこの遊び専科」別冊となっている、ちょっと他になかったタイプのアウトドア誌。
海、山、カヌー、自転車、郊外を問わず、探検・冒険に関する記事がやや脈絡なく並ぶ、期待の怪作雑誌?
インタビュー記事にしても、立松和平やローリー・イネステーラーなどは当然だが、みうらじゅんとか高田万由子とかは普通出てこない人でしょう。
この、ややごった煮風の、何でもあり風の内容と、他の大手OD誌と比べてやや安っぽい怪しい感じがとてもいい味を出していた。
猫仙人も登場したことがあり、先行きに大いなる期待と不安を感じさせる雑誌だったが、残念ながら数号にして不安が現実になってしまいました。
その後。だいぶたってから、山と溪谷増刊ということで「探険倶楽部 AGAIN」として一瞬復刻されました。
山の本 (白山書房)
山の本 -白山書房-
創刊号:1992年5月号。
ビジュアル全盛、オートキャンプ全盛の中で創刊された、モノクロで殆ど文字だけでできた「山歩きの読本」。
紀行、エッセイ、座談、紀行ガイドで構成され、山と山歩きの話題だけに絞られた潔さで、定着した読者層が多そうである。
巻末の執筆者紹介では、有名人も無名の人も常連も同列に扱われ、いかにも読者がそのまま参加して作られる本という感じで、 山と文章に関する、開かれた同人誌といった趣である。
「新ハイキング」にも似ているが、もっと幅広い内容にして総合的に開かれた味のある本だ。
ネット全盛になってから「ヤマレコ」をはじめ、山行記録のWEB媒体はたいへん多く存在するが、今となっては紙+文字媒体でこれをやるというのは逆にとてもハードルが高いだろうと思われる。
この路線を守り続ける限り、きっといつまでも続く雑誌であろう。
GOODY (ベネッセ)
Goody(グッディー) -ベネッセ-
創刊号:1996年5月号。
Tepeeに遅れること1年後、あのベネッセ・コーポレーションが創刊したアウトドア誌。
創刊発表プロモーションを赤坂プリンスホテルで大々的に行ない、創刊からいきなりビーパルを上回る発行部数でぶつけるという、ものすごい販売戦略だったが、やはりビーパルにはかなわかった。
創刊編集長の駒崎さんは、家族で世界一周をしたヨットマンで、温厚ないい方でした。
ベネッセらしく、読者サポーターによる情報レポートなどを企画したり、独自のグッズの通信販売をやったり、ホームページでも読者との情報交換をしたり、そういった面では他社のまねできない独自性を出しつつあった。
他誌との差別化のためか、「アウトドア」という言葉使わず、「オープンエア・マガジン」と言っていた。
しかし、ちょっと大衆向けを意識しすぎてコアな情報が足りなかったような気がする。
1997年7月号から編集長が変わり、首都圏にターゲットを絞った情報誌としてリニューアル。
だが、これも結局無期休刊となった。
Tepee (集英社)
Tepee(ティピー) -集英社-
創刊号:1995年5月号。
雑誌に強い集英社がビーパルに対抗して作ったような総合アウトドア誌だが、この路線はすでにビーパルが牙城を築いているし、 なかなか独自性を出すのは難しいところだ。
そのかわり、うまくまとめればそこそこのものはできるわけだが・・・
この創刊号はとりあえずビジュアルも多用し、グッズのカタログページも作り、野田知佑氏の対談を起用し、イヴォン・シュイナード氏からのメッセージなど、内容も盛りだくさんでさすが大手なのだが、何となくまとまりが良すぎて 個人的にはあまり買いたいという気は起きなかった。
それでもしばらく後の号では、かなり本も厚くなって情報量も増え、ビーパルやアウトドアとは感じの違う誌面作りで、 モノ志向の部分やいろんな方向で厚みが増し、独自のスタイルが出来上がってきたという感じだったのだが。
インターネットHPも当時としてけっこう充実してたし、それなりに安定していたようだったが、結局廃刊になってしまった。
クライミング・ジャーナル (白山書房)
クライミング・ジャーナル -白山書房-
その名の通り、クライミングの専門雑誌。
創刊号:昭和57年4月号。(1982)
編集者として遠藤甲太氏が参加している。
特集は「ハード・フリー・クライミング」で、巻頭インタビューに山崎祐和さんが若き俊英として出ている。(若い!(^^))
記録記事で同氏のグランドジョラス北壁、須田義信氏の甲斐駒・篠沢七丈瀑アイスクライミングなど、 技術記事で中川芳郎氏のプロテクション・テクニック、橋本覚氏のボディ・トレーニングなど。
白山書房らしい、「ジャーナル」の名がふさわしい誌面作りだが、約10年、53号まで続いた後廃刊になってしまった。
・・・そういえば、ほんの一時、ここのアウトドア雑誌もあったなあ・・・
Be-Pal (小学館)
Be-Pal (ビーパル) (小学館)
日本のアウトドア雑誌のスタイルを変え、ひとつの形を作ってしまった雑誌だ。
創刊号は1981年7月号。
当時、小学館から新しいアウトドア雑誌が出るという噂を聞いて、期待して待ち構えるようにして手に取った創刊号を見てびっくり。
これがアウトドア雑誌か!?
Outdoorの硬派なイメージの微塵もない、その表紙!
山や森の風景写真、またはバックパッキングやクライミングやカヌーのアクティブな写真をイメージしていた眼に飛び込んできたのは、 ほとんど何の脈絡もない、水着のおねえちゃんの、しかも顔さえ出てない胸だけ強調した写真で、Playboyか平凡パンチかという 斬新な、または異常な表紙だった。
ちなみにおねえちゃんは第3号でやっと顔が出た (^^)
それまでアウトドアといえば、伝統的登山アルピニズムの流れか、またはソーローやビート的文化などの流れをくむアメリカの哲学的なバックパッキングムーブメントを意識したものか、という2大勢力だったのだが、ここは違った。
こういう、独特の「軽さ」はそれまでのアウトドア系雑誌には見られないものだった。
記事内容にしてからが、キャンピングカーで埋立地で読書を楽しむとか、公園でゴム動力飛行機を飛ばそうとか、クライミング用品を駆使して木登りをするとか、スーツの下にフライベストを着て会社帰りに釣りをするとか、およそ従来考えもしなかったバカバカしいような記事がたくさんあって、当時は理解しがたいものがあった。
それと、そういった記事の合間に必ず出てくる小物グッズの価格付き紹介、細かいコラムを集めたページの作りなど、 どう見ても当時画期的だった、カタログ・コラム雑誌「ポパイ」の手法をアウトドアにも取り入れたようなやり方だったように思われる。
従来の硬派登山人間にとっては、恐ろしく散漫で軟弱な雑誌としか言いようのないものだったが、敷居の低いその世界はたちまち多くのファンを生み、業界No.1雑誌になってしまったのだ。
アウトドア、キャンプ、アウトドアファッションがこんなに一般化したのは時代の流れだが、Be-Palはそういったアウトドアの大衆化の流れと完全に一体化して、またスタイルを作りながら現在に至ったのだろう。
この流れの元祖となり、一方の歴史を作ってきたことで、その後どんなに多くの雑誌が出てきても、みんなこの雑誌のエピゴーネンに 見えてしまう宿命が一時期はあったようである。
きっと、アウトドア雑誌の歴史の中では、OutdoorとBe-Palの2誌は永遠に本家と元祖でありつづけるのだろう。
洞穴学ことはじめ
洞穴学ことはじめ
吉井良三 岩波新書 1968年
洞穴学ことはじめ ジュール・ベルヌの「地底旅行」を読んで以来、洞窟に興味があった。
実際に行ったことは無かったが、中学のとき友人達とハイキングで日原鍾乳洞に初めて行った。
殺風景な洞内にはあまり感動しなかったが、そのころ偶然見つけたこの本にはすっかりはまった。
まだケービングとかスペレオロジーといった言葉がポピュラーで無かった(今でもか?)このころに、すごく新鮮な書だった。
というか、今から見れば古き良き時代に、自然科学者のロマン・探検家のロマンが純粋に満ち溢れていた。
洞窟に限らず、自然科学のもつロマンが輝いていた時代だったのかも。
現代では少年や若者の理科離れがよく言われるが、こういう本のワクワク感を感じないのだろうか。
これは私がアームチェア・スペレオロジストになるきっかけの書であった。
本格ケービングに憧れ続けながらもそのまま年をとってしまったが、今もたまに観光洞でわくわくしたりしている。
著者は京大の生物学の教授だが、エッセイストとしても素晴らく楽しい文章で、秋吉台や竜泉洞、安家洞などの初期探索のくだりなど淡々としながらも情熱が伝わってくる。
日本の近代洞窟探検の歴史の一端もよく判る、洞窟探検と生物学に興味のある人には絶対オススメの書。