気流の鳴る音 -交響するコミューン-
真木悠介 筑摩書房 1977年
カルロス・カスタネダの「ドン・ファンの教え」シリーズについての最良のテキストとして有名な本である。
いわゆる近代合理主義に対する、オルタネイティブな考えかたのもちかたについてのヒントが、ここにはたっぷり詰まっている。
人間の思考様式、価値観や文化を相対化し、相対化した価値観自体を相対化してゆく、そういった考え方を提示されたとき、いわゆる近代合理主義に囚われている我々は、ともすればそういった考え方を単純化した対立軸としてしかとらえられない。
近代合理主義批判の結果、別の違った合理主義の罠に陥ってしまうのである。
カウンターカルチャーを「反文化」や「非文化」と認識するのは大いなる誤りであり、正当な意味の「対抗文化」として認識しなければならない。
此岸と彼岸といったものの考え方、特定な歴史的文化的価値観・世界観の自己呪縛を単にアンビパレンツなものととらえることではなく、ある「世界」が「世界」を超え、かつ「世界」を内包しているという、いうなればホログラフィ的な世界観が必要なのである。
「明晰さ」とはそれ自体の限界を知る明晰さを含まねばならない。
また、その一種ホログラフィックな世界観が共同体としての社会のホメオスタシスを強化し、人類の価値を高めるはずなのである。
残念ながら、今、世界は間違いなくその逆に進んでいる。