呪術の彼方へ/力の第二の輪
カルロス・カスタネダ 真崎義博訳
二見書房 昭和53年
これはカスタネダの一連の第5作となる。
ただし、日本でのシリーズでは第4作である。
今回の中には肝心の呪術師ドン・ファンは全く出てこない。
代わりに女呪術師と、ドン・ファンを取り巻く多くの人脈、弟子たちがたくさん登場する。
そう、カスタネダはすでに自身が戦士なのであった。
内容はさらに哲学性を帯びてきて、「ナワール」と「トナール」といった、認知の世界の論理体系のようなものが登場する。
こういうところが批判勢力には一番懐疑をもたれるところだろう。
ヤキ・インディアンの伝統の中に本当にこのような高度な論理認識が存在するのか?
私も疑問である。
それはインディアン文化を蔑視していうのではなく、むしろこういった論理分析的な見方は所詮西欧文化の枠内でのとらえかたでしかないのでは?という疑問である。
ただ、そう見るのはすでに著述家であり呪術師でもあるカスタネダの術中にはまっているだけなのかも知れない。
「履歴を消し」敵を欺くのは戦士の基本的な技なのだから。