山と高原 (朋文堂)
「朋文堂」といえばあの涸沢ヒュッテを経営し、戦前から、この山と高原を出版してきた登山界の重要出版社です。
手元にある山と高原は、古書店で購入した昭和32年の8月号で、薄いながらもたいへん内容の濃い本格登山専門誌です。
副題に「山とカメラの雑誌」とあるだけに当時の雑誌としては写真ページも多いようです。
流石に昭和32年の本となると、登山ルートそのものの本質はさほど変わらないものの、交通手段や用具などはだいぶ違って興味深いものがあります。
まだ黒部ダムが存在しない黒部峡谷下の廊下や、ロープウェイが存在しない宝剣岳などの紀行を今読むのも楽しいものです。
そして筆者としては一番面白いのは、登山用品の広告!
今もお馴染みのあの店この店、メーカーや問屋も多いですが、殆ど聞いたことも無いお店やブランドが多くて面白いです。
(筆者はこの1年前の生まれです)
アイデア・グッズの新製品広告なんかも多くて、いかにも当時の一般登山界が活気を帯びていて楽しい感じですね。
この朋文堂では自社で登山用品の通販を行っていたので、誌上に販売価格表が掲載されているため当時の相場がよく判ります。
また、この時代の特徴として、ハイキングプランを提案する鉄道会社の広告も目につきます。
ニュース欄にはヘルマン・ブールのオーストリア隊がブロードピークに登頂成功、とか立山の室堂までジープが通れる道ができたニュースとか。
書評コーナーには上田哲農の「日翳の山ひなたの山」が新刊で、新田次郎が推薦していたりして時代を感じます。
黄ばんだ紙に活字だけの古い記事を読んでいると、最近のアウトドア誌などよりも山に行きたい気がしてくるから不思議です。