洞穴学ことはじめ 吉井良三
岩波新書 1968年
洞穴学ことはじめ ジュール・ベルヌの「地底旅行」を読んで以来、洞窟に興味があった。
実際に行ったことは無かったが、中学のとき友人達とハイキングで日原鍾乳洞に初めて行った。
殺風景な洞内にはあまり感動しなかったが、そのころ偶然見つけたこの本にはすっかりはまった。
まだケービングとかスペレオロジーといった言葉がポピュラーで無かった(今でもか?)このころに、すごく新鮮な書だった。
というか、今から見れば古き良き時代に、自然科学者のロマン・探検家のロマンが純粋に満ち溢れていた。
洞窟に限らず、自然科学のもつロマンが輝いていた時代だったのかも。
現代では少年や若者の理科離れがよく言われるが、こういう本のワクワク感を感じないのだろうか。

これは私がアームチェア・スペレオロジストになるきっかけの書であった。
本格ケービングに憧れ続けながらもそのまま年をとってしまったが、今もたまに観光洞でわくわくしたりしている。

著者は京大の生物学の教授だが、エッセイストとしても素晴らく楽しい文章で、秋吉台や竜泉洞、安家洞などの初期探索のくだりなど淡々としながらも情熱が伝わってくる。
日本の近代洞窟探検の歴史の一端もよく判る、洞窟探検と生物学に興味のある人には絶対オススメの書。

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